謎(4)

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女は船上にいた。

華奢な体を大きめの雨具に包み、暗くよどんだ湖面を見ていた。

最近おかしなことが起こっていた。

ただ、ちょうどジグソーパズルのように、足りないピースが多すぎてきちんとした推論ができないもどかしさもあった。

嫌な気分を引きずりながら、パソコンの画面を眺める。

そこには船の進路と磁石の向きが示されていた。

「なぜ」

女は首をかしげた。

人工衛星を用いたグローバルポジショニングシステム(GPS)では、進路は西に向かっているにもかかわらず、磁石が示す方向は北になっていた。

ちょうど90度ずれているのだ。

どちらかがおかしいのか、それとも実際に磁場がくるっているのか。

よくわからなかった。

そう言えば、同じようなことが以前あった気もする。

遠い昔の記憶がかすかによみがえる。

いつだったのかは忘れてしまった。

ただ、生暖かく感じる湖面の異様な雰囲気から、余計に方位の食い違いが気になっていた。

男が水中に潜ってから3時間がたっていた。

もうそろそろ浮上してもよい頃だ。

操舵室にいる船長と連絡を取る。

音響測位装置(SSBL)を通して捕捉できる男の位置が近づいてきた。

「停船」

女は鋭く指示した。

船は後進をかけて止まった。

できる限り多くのピースを集めて、真実に近づきたい。

そう思いながら、女はコーヒーを淹れた。

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