湖の鎮魂歌(49)

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ある新聞から琵琶湖の活断層に関する記事を書いてくれと頼まれた。

湖の中の断層についてまとめたものとしては、1990年に書かれた植村・太井子の論文がある。

地理学評論に書かれたこの論文では、西岸湖底断層系、南岸湖底断層系、東岸湖底断層系の3つに分類している。

ユニブームとエアーガンの測定結果を用いた診断で、現段階では質や量ともに最も信頼できるデータだと言える。

ネットで調べると、「活断層とは、最近まで活動しており、将来も活動する可能性のある断層である」と定義されている。

最近というのは、数十万年以降を指すらしい。

その意味では、40万年の歴史を誇る現琵琶湖は十分にその資格がある。

東西からの圧力によって沈降している湖なので、琵琶湖の断層はすべて逆断層に分類される。

私が自律型潜水ロボット「淡探(たんたん)」を用いて撮影した湖底映像の中に、断層を示唆するものがある。

文頭に示した図中の赤丸(A点)と青丸(B点)がそれにあたる。

A点で撮影された映像は、奇妙な形をしている。

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まるで人が作ったようにきれいなブロックが並んでいる。

ひとつの段の高さが30cmほどだろう。

2010年12月18日に発見した。

この場所の水深は88.31mで、水温8.14℃、溶存酸素濃度12.1mg/L、電気伝導度130.67μm/cm、pH7.13であった。

植村・太井子が示している断層系の場所とは異なっているので、最近になって形成されたものなのかも知れない。

1976年に実施された国土地理院の測量と、2001年に行った私の計測結果の両方が正しいとすると、琵琶湖の深い場所における水深は過去25年間で30cmほど深くなっている。

なんとなく整合性がありそうな話である。

B点では、高さ数メートルにわたるきれいな断層面が見える。

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おそらく見ている手前がずり落ちたのだろう。

2008年11月20日に撮影されたものだ。

水深は57.08mで、水温7.88℃、溶存酸素濃度4.34mg/L、電気伝導度135.2μm/cm、pH7.06であった。

これは南岸湖底断層系の近くに存在する。

そう言えば、英国の歴史家であるLisa Jardine教授 (1944-)の文章に次のような一節があったことを思い出した。

It is a basic requirement of scientific method that a tentative explanation has to be tested against observation of the natural world.

From the very beginning scientists have been suspicious whenever the data fit the hoped-for results too closely.

もっと予算と機会があれば、琵琶湖の底で起こっているこれらの興味深い現象を解明できるのだが。

そう思って、懸命にファンド申請書のマス目を埋めている今日この頃である。

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